再保険というのは保険会社が他の保険会社にかける保険です。
大きな建物や船舶あるいは航空機にかける保険ではいったん事故が発生すると保険金の支払いは莫大なものになります。
地震や台風、津波などの自然災害でも莫大な支払いとなり、保険会社の支払い能力を超えてしまう恐れがあります。
保険会社の支払い能力を超えた支払いが発生すると保険会社は破綻してしまうので、保険金の支払いができなくなります。
このような場合に備えて保険会社は再保険をかけて自分の支払能力を上回る支払いが発生しないようにしています。
保険会社がお互いに再保険をかけることで、リスクが分散され、より多くの保険を引き受けることができます。
地震保険などは特に大規模な支払いが想定されるため国が再保険を引き受けています。
再保険取引では英国のロイズが有名ですが、ロイズはもともとロイドという人が経営するコーヒー店で、 ここで海上運送に関する情報がやりとりされて、海上保険ができました。
昔は保険会社が自分の保有するリスクを軽減する手段は再保険以外は 複数の保険会社が共同で保険を引き受ける共同保険くらいしかなかったのですが、 近年は金融システムの発達により金融派生商品(デリバティブ)を使って保険リスクを金融市場で 取引することも行われます。

このように便利な再保険ですが、問題もあります。
再保険契約には保険会社が引き受けたひとつの契約の一部を再保険するもの、 引き受けた多くの契約をまとめて再保険するもの、 支払保険金の一定割合を支払うもの、支払い保険金が一定額を超えたらその部分だけを支払うものなど多くの種類があり、 契約形式や支払方法の組み合わせが多種多様で専門家でないとその取引の内容は理解できません。
そして再保険取引はまとめて決済されるため、 どの再保険契約からいくら資金が動いたのかを判別するのは容易ではありません。
このため、取引の中に不明朗な資金が流れ込んでもその解明は困難です。
また、資産家や企業が海外にキャプティブとよばれる自分専用の保険会社を設立することがありますが、 キャプティブとの再保険を通じて利益操作や節税だけでなく不正取引が行われることもあります。
保険会社が自分の子会社との再保険取引で利益を調整したりすることもあります。
本書の中でも自分が個人で出資した再保険会社に優良契約を流して不正に利益を得る役員が出てきます。
このように不正取引の手段に使われたりするため、昔から再保険は脱税の温床といわれてきました。
しかし最近では金融機関のコンプライアンスは厳しくチェックされるようになり、 金融庁も再保険の専門家を採用したりして、複雑な再保険契約もしっかり調査されますので、 昔のような不正取引は難しくなっています。